套路を自分でできるようになる方法
- Mitch Sato
- 4 分前
- 読了時間: 6分
太極拳を習っている人にとって套路を覚えられない、というのはかなり共通した問題ではないでしょうか。シンガポールで教えていた時も、東京で教えるようになった今も、多くの生徒さんからその手の相談を受けてきました。
自分の体をできるだけリラックスさせて、健康に与するために太極拳をやっているという人にとっては、自力で套路を踏めるようになるのは必須だと思います。人の動きを見ながら真似をしているだけだと、姿勢は崩れますし、自分の動きに集中することができません。それが理由で十分に体を緩めることができなくなります。
シンガポール時代は、私自身の先生の教え方を真似ていただけなので、何か工夫をして覚えてもらおう、という試みはしませんでした。できるだけ正確に、忠実に先生が教えていることを教える、ということに終始していました。当時は、広東語のインストラクションと音楽をかけて套路をしていたのですが、教室には、私も含めて広東語がわからない人が多かったので、このインストラクションを元に動きを教えることはほとんどありませんでした。
東京で自分の教室を始めるようになっても、初めはシンガポールでの教え方を踏襲していました。それは、ここの動きで、1、2、3を繰り返して、それぞれの数を数えた時に、どんな動きをするかを教える方法でした。自分自身はこの方法で習ってきたので違和感はなかったのですが、多くの生徒さんが、私が一緒にやっていないと套路を踏めないことに気がつきました。動きの都合で私が生徒さんに背中を向けるようになってしまうと、動きがわからない、というコメントを何度ももらいました。
数に対応した動きを行うためには、数に対応した個々の動きを覚える必要があります。覚えられない人は、私が動いているのを見て真似るだけに終始してしまうことになります。ちなみに、数に対応した動きを文書で書き出して生徒さんに共有することも行ったのですが、動きを文書で紹介し、それを理解してもらうのは難しいことだと感じました。ある程度習得が進まないと文書を読んでもらっても中身が全くわからない、ということが続きました。
生徒さん自身で動けるようになることは、これを繰り返していても難しいのではないかと思うようになりました。
次にトライしたのは、引き続き生徒さんと一緒に套路を行うのですが、一緒に行う際、できるだけ細かくインストラクションを出すようにしてみました。個々の動きで、足がどう動くのか、手がどう動くのか、体の向きはどちらに行くのか、を動きが滞らない範囲で伝えながら一緒に動いてもらうようにしてみました。動きの詳細を覚えなくてもついてきてもらえるのではないか、という期待を抱いていました。
1、2、3と数えていたときに比べてれば、動けるようになったと感じましたが、自身でできるようになる、という点からは、これも問題がありました。インストラクションを出す私がいないとできない、ということでした。細かいインストラクションを出し続けると、私が理想とするスピードからはどうしても遅れがちになります。うちの教室では、音楽をかけながら套路を行っているので音楽のスピードと合わなくなるのです。
ここでももう一つのことに気づきました。いくら細かくインストラクションを出していても、集中してそれを聞いてくれていない限り、生徒さんがインストラクションに対して動きを行うのではなく、引き続き私の動きを見ながら真似ているだけではないか、ということです。頑張って、細かくインストラクションを出しても、無駄に流れているBGMになってしまっていました。
ここで、発想を大きく転換させることにしました。以前から、套路を練習するときには、音楽に私が吹き込んだ最低限のインストラクションを被せたものを使っていました。ここで録音されているインストラクションだけでは全ての動きを再現することはできません。これを最大限使うことにしました。
まず最初に取り込んだのは、耳に入ってきたインストラクションを動きに繋げる、という練習でした。右手を上げろ、と言われたら、右手を上げる、左足を上げろ、と言われたら左足を上げる、と言った感じです。初めに動きのデモをこない、動きの説明をして、私自身は一緒には動きをせず、生徒さん自身に自発的に動いてもらうようにしました。
初めのうちは、一緒にやらないと動きがわからない、というコメントを何度もいただきました。ここで私が折れてしまうと、以前の方法に戻るだけで前に進めないので、譲歩せず、繰り返し簡単なインストラクションを流して練習を繰り返してもらいました。
昔を知っている生徒さんからは、今の方法の方が楽に套路を踏めるようになった、というコメントをいただきました。かなり多くの生徒さんが、自分自身で套路を踏めるようになったと感じています。耳から入ってくるインストラクションが次の動きのヒントになるので、単純に自分自身の記憶に頼るよりは楽に動けるようになります。
この方法は、教えている立場の私にも、大きな利益をもたらしました。自分が套路を一緒にやっているときには、生徒さんの動きをきちんと追うことができていませんでした。今は、じっくりと動きを観察できるので、どこで生徒さんがつまずくのかを正確に掴むことができるようになりました。多くの場合は、一つの動きができていないためにそれ以降が繋がらなくなっていました。今までは、動きが止まってしまうと、その動き全体をはじめから説明をしなければいけませんでしたが、今は、ピンポイントの説明で済むようになりました。説明を聞いている生徒さんも問題に集中できるようになりました。
この方法だと、「正しい」動きがわからない、というコメントも何度もいただきました。「正しい」はレベルによって変わるもので、少なくとも初学者にとっての「正しい」は、インストラクションが指示をしている範囲で体を動かし続けること、多少間違っていても止まらないこと、と定義することにしました。左右の手のどちらが前に来ているべきかを間違えても、そのまま聞いた通りに動いて動き続けられれば、良いことにしています。
この数ヶ月、教え方を変えるという大きな変化を起こしてきました。今の教え方がベストだとは限りませんが、少なくとも現時点ではこれで行こうと思っています。生徒さん自身で動けるようになれば、教室に来ない時でも自分で練習ができます。自分で動けるようになれば、その後より正しく、より詳細に修正する作業もやりやすくなります。
うちの套路は40分もかかる長い物なので、少しでも多くの生徒さんが最後まで一緒に套路を楽しめるようになるために、これからも努力を続けていきたいと思います。
中野区鷺ノ宮の太極拳教室です。呉式太極拳を基礎からしっかり教えています。きちんと足腰を鍛えて、100歳まで自分の足で歩ける心と体を作りましょう。体験レッスンやってます。下記のボタンを押して、お問い合わせください。
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