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「行功心解」(4) - 務令沉着

今回は、行功心解(ぎょうこうしんかい)の次の部分に進みます。「務令沉着」です。「務めて、沈着せしむ」と訓読することにしましょう。




「務」は、日本語の辞書を引くと、「仕事などの役目を受け持ってそれを果たす」となっています。中国語では、この文字を副詞として用いる場合には、「きっと、必ずや、是非とも」という意味が出てきて、日本語では同じ発音の文字ではありますが「努めて」に近い意味に感じます。


「沈着」は、落ち着くこと。「令」は、古典中国語では使役の助詞で、「〜させる」と言う意味です。


以上から、単純にこの部分を日本語に訳すと、「可能な限り、落ち着かせる」と言うことになります。


何を落ち着かせるのかというと、前の文章からのつながりで、「気」です。前回からの続きで日本語に訳すと、「(落ち着いた)意識を用いて、呼吸を行い、その呼吸(気)を可能な限り、落ち着かせる」ということになります。



さて、「気を落ち着かせる」とか「気を沈める」ってどんな感覚でしょうか。太極拳ではよく聞く話です。でも、多くの人にとって、どんな感覚なのか、どうしたらそんな感覚が得られるのかが疑問に感じられるのではないでしょうか。


このブログで紹介をしている蘇峰珍氏の本書でも、これに対する直接的な答えは書いていません。こんな感じの説明がしてあります。


「変わることのない意思と物事を成し遂げようとする精神力を持って、大変な研究を続けられるような人が、長年にわたり、心を以って気を行い(以心行気)、気を以って身を動かし続けることを通じて、体をリラックスさせ、無駄な力を一切使わない鍛錬を行うことで、「気」がだんだんと丹田に沈むようになり、それが踵や腕に及びようになり、最後には「気」が沈着した感覚を自ら感じられるようになる」


要は、簡単にはできず、努力を続けないと感じることのできない感覚だって言うことです。感覚を文字で表すのは難しいことですが、誤解を恐れずあえて試みてみます。私の感覚では、「お腹に重心が下がって、どっしりと、安定感をもって立っていられる感じ」です。お相撲さんが四股を踏んで、持ち上げた片足をドーンと地面に下ろして、腰をグッと落とした時の感覚ってきっとそんな感じじゃないかって想像します。少なくとも頭や胸に意識が上っていて、ふわふわした感じがするような状態でないことは間違い無いです。


こんな感覚にたどり着くために、努力をしなければいけない、といってもどんなことに注意をして努力をしなければいけないか、それを次回紹介します。キーワードは「松」です。




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以心行気,務令沈着,乃能收斂入骨;以気運身,務令顺遂,乃能便利従心。精神能提得起,則無遅重之虞,所谓頂頭懸也;意气須換得霊,乃有円活之趣,所谓変動虚実也。発須沉着松静,注一方;立身須中正安舒,支撑八面。


行気如九曲之珠,無往不利;運如百錬鋼,何堅不摧?形如搏兔之,神如捕鼠之猫。静如山岳,動若江河。蓄如張弓,発似放箭。曲中求直,蓄而後発。力由脊発,步随身換。收即是放,断而復連。往復須有折叠,進退須有転換。極柔軟,然後極堅鋼。能呼吸,然後能霊活。气以直養而無害,以曲蓄而有余。心為令,気為旗,腰為纛。先求开展,後求緊凑。乃可臻于缜密矣!


又曰:先在心,後在身。腰松,気斂入骨,神舒体静。刻刻在心。切記“一動無有不動,一静無有不静。”牽動往来気貼背,斂入脊骨。内固精神,外示安逸。迈步如猫行,動如抽丝。全身意在精神,不在。在気則滞。有者無力,無者純鋼。若車輪,腰如車軸。



 

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