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身体を安定させるためには?

執筆者の写真: Mitch SatoMitch Sato

この間、ちょっと嬉しいことがありました。二人の生徒さんに、どうして動きがそんなに安定しているのかと聞かれました。前後左右に移動する、片足を上げる、片足を上げたまま回転をする、等々太極拳にはいろいろな動きがありますが、これらを身体がぐらぐらすることなくできるようになることって、太極拳をやっている人にとっては一つの目標ではないでしょうか。


いろいろな要素がありすぎて、とっさに出てきた答えは、足が短いから。生徒さんたちも笑っていました。足が短いと当然重心はそれだけ低くなるので、あながち間違った答えではないとは思いますが、質問した生徒さんたちは自分たちもそうなりたいと思っているわけで、身体の特性だけで答えにするわけにはいきます。ちなみに、私は本当に短足です。


重心を低くすること、そのために気を静めて、丹田に集めること、なんていうのはよくいわれると思います。その通りだと思うのですが、最近自分が考えている一番重要な要素は、「足の裏」です。


立っている状態では、地面の接点となり、身体を支えているのは「足の裏」だけです。ここの安定なしに、それより上にあるものをいかに工夫してもだめなのではないかと思うのです。ちょうど土台のしっかりしていないところにいくら頑丈な建物を建てても、何かあったら簡単に倒れてしまうのと一緒です。


では、足の裏を安定させるのにはどうしたらよいのか。足の裏は、全体でのっぺりと身体を支えているのではなく、主に三つの点で支えています。踵、親指の付け根(母指球って言われるところですね)と小指の付け根です。



理想の体重をより多くかける順番は、まずは踵、その次が母指球、最後に小指の付け根だと理解しています。


うちの教室で見ていても、小指側に体重をかけてしまう人って結構多いです。一番体重を乗せてほしくないところに体重が乗ってしまっているわけです。これは、膝痛める原因の一つになっていると思います。足の裏の外側に体重をかけると、膝が外側に開きがちになって、つま先と膝の向きがそろわなくなります。膝を安定させるためには、つま先と膝の方向を合わせて、つま先の真上に膝が来るようにしてあげる必要があります。この二つがずれていると余計な筋肉を使ったり、関節がねじれたりして、膝痛の原因になります。


ふくらはぎには、腓骨、脛骨という二本の骨があります。外側にあるのが腓骨(ひこつ)、内側にあるのが脛骨(けいこつ)です。脛骨の太さは、腓骨の4倍ぐらいあります。安定して立ちたかったら、より太い骨に依存たいですよね。足の裏の外側に体重をかけて立っていると、細いほうの腓骨に頼って立つことになります。骨が十分に強くないので、立ち続けるために余計な筋肉を使うことになります。特に腿の外側の筋肉です。結果、腿の外側の筋肉が固くなり、これも膝痛につながります。


次によく見る問題は、上の絵でいうと前側アーチにより体重がかかってしまっている状態です。本来はしっかり踵を地面についてほしいのですが、踵が浮き気味になって、前に体重がかかってしまっているわけです。


前のめりになっているので、どうしても膝がつま先よりも前に出ます。結果、膝を安定させるためにどうしても余分な筋肉を使う必要が出てきます。この場合は、特に腿の前側の筋肉です。これも膝痛に通じます。前に体重がかかっていると、片足を上げる動作をするのにも支障が出ますし、片足を上げた状態で制止するのもより難しくなります。


足の裏のどこに体重をかけたらよいかという話は、何も太極拳だけに限った話ではありません。前に歩くときに、足の裏の前側に体重が乗っていると、つまずいた時にそのまま前のめりに転倒してしまう可能性が高くなります。日常生活でも、転倒や膝痛を防ぐためにあるべきところに体重を乗せた方が良いです。


では、どうしたらできるようになるのか。まずは、自分の現状を知ることです。でも、長年立ち続けている姿勢は、すでに癖になってしまっていて、客観的に観察できるような状態ではないと思います。どこに問題があるのかもわからないことが多いのではないでしょうか。


とはいえ、何の策もないというわけではないです。私の場合には、まず毎日5分から10分、立ってみることをお勧めします。そのうえで、身体を前後左右に揺らしながら、どこに体重が乗っているのかを感じてみることから始めたらよいのではないかと思っています。動きが伴うと、より体重が移動するので、どこに体重がかかっているかが把握しやすいです。


ちょっとわかってきたら、まずは踵、その次に母指球に体重をかけてみます。外側にできるだけ体重が行かないように気を配ります。


教室では、動作を治しているときに、指で生徒さんの踵や母指球を押して、どこに体重をかけるべきかを指導したりもします。


本人は気が付かないだけで、周りの人が見ると明らかに体重が外にかかっていたりすることもよくあります。一緒に太極拳をやっている人に、何か感じることがないかを聞いてみるのもよいかもしれません。


うちの太極拳教室のテーマになっている、「百歳まで自分の足で歩ける心と身体を作る」ためには、足の裏は外すことのできない要素です。



これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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