top of page
執筆者の写真Mitch Sato

新しい悩み ー 「欲」

太極拳の行き着く先は心の安定だと思うようになってから、禅や老子に関する本をよく読むようになりました。そんな中むくむくと育ってきた疑問があります。「欲」に関することです。




私自身、元々とても欲深かったと思います。学校にいる間は、少しでもいい成績を取りたい、会社で働き始めてからは、少しでも良い成績を残したい、人よりも良い生活をしたい、人よりも幸せになりたい。なんだか常に人と自分を比べて生きてきました。最近、比べるのをやめようと思うようになれたら随分気分が楽になった気がします。


そんな変化があったので、「欲」はよくないものだ、と言われてもそれほど違和感はありません。なんとなくなければそれに越したことはないものなのだと最近は思います。


先日、澤木興道氏の「禅談」という本を読んでいたら、こんな一節がありました。


「我々の心というものには、しっかりした目標がなければいかん。最も正確に目標をつけて、こうした時にはこう、ああした時にはああと、目標に向かって時々刻々うまくハンドルを回してゆかなければならぬ。それには「願」がなければならぬ。」(60ページ)


これがきっかけで、こんな疑問が出てきました。


  • 「欲」ってなんだろうか?

  • 「欲」は本当に悪いものなのだろうか?

  • 良い「欲」はあるのだろうか?

  • 良い「欲」と悪い「欲」があるとしたらその境目はなんだろうか?

  • 努力や目標と「欲」は違うものなのか?違うとしたら何が違うのか?


例えば、太極拳を一所懸命に練習する。これが「欲」と見られることもあれば、技を磨くために修行を積んでいて尊い、と見られることもあるわけです。上達しようとして努力をすることは普通は良いことだと考えられます。でも、例えば、上達した結果、名声を得ようとか、お金をたくさん儲けよう、という考えがあからさまになると、欲深い、って評価されかねません。


マラソンのレースで必死にゴールを目指しているランナーを欲深いっていう人はそんなにいないと思います。レースの後に、「賞金のために頑張って走りました」なんていうことメントを残すと違う印象を持つ人もいるでしょう。


でも、お金は生きていくために必要なものだし、それを稼ごうと頑張ること自体が「悪」だと考えられるのもおかしな話です。


でも、法華経には、「諸の苦の原因は大欲を以って本となす」と書いてあります。人間の苦悩の元は「大欲」だそうです。苦しみを生み出す原因を良いものだと考えることは普通には考えづらいので、「大欲」は悪いものという評価につながります。人を苦しみから解放させるには、「欲」を少なくすれば良い、という発想になるわけです。


そこから、どういう「欲」を減らしたら良いのか、ということを考え始めました。努力をすることまで否定する必要はないと思います。目標を持つこと自体が悪いわけではないはずです。


といったことをつらつらと考えていたら、上に挙げたような問題意識が出てきました。


今日の午後、自分の本棚にある本を見つめてあれこれ考えましたが、全くスッキリせず、ますます暗中模索をしている状態です。


老子の33章にこんなのがあります。「満足を知るものは富み、力を尽くして行うものは志が遂げられる(蜂谷邦夫著「老子」)」。蜂谷氏は、満足を知ることと力を尽くすことは、反対のあり方なので、この部分にはなんらかの間違いがある可能性を指摘しています。


「自分のために」という思いが捨てられれば「欲」ではなくなるのか、という気もします。私自身、自分が上手くなりたい、他の人よりも上手くなりたい、という気持ちで太極拳に向き合ってきた時期は結構長いです。おかげで表面的には上手くなれました。もう一歩先に行くためには、「自分が」という思いを捨てる必要がありました。


でも、それだけだと、なんのために努力をするのかがよくわからなくなります。「社会のために」というスローガンを掲げて努力すればそれは「欲」ではない、なんて簡単には割りきれなさそうです。頑張る主体は「自分」なわけで、それを全く無視して、他の人のために頑張るなんていうことがあり得るのか、今の私にはわかりません。


自分が金融機関に勤めるきっかけになったこの映画のこのシーンを見ているとますますわからなくなります。マイケル・ダグラスの話し方はとても説得力があって、私は、かつては「欲」は悪いものではなく、技術を進歩させる原動力だという彼の発言を正しいと思っていました。



今では、正しい、とは言いません。でも、完全に間違っていると主張することもまだできなさそうです。「欲」はこれからしばらく、座禅や立禅の時にじっくりと考える長期的な課題にします。



 

コンタクト ー ご興味のある方は是非ご連絡ください


電子メール: mitchsato17@yahoo.com

Homepage:


 

呉式太極拳教室「太極の小径」では、2023年10月からの生徒さんを募集しています。詳しくはこちらからご覧ください。



 

これからもいろいろな話題を紹介していきます。

最新のブログをご覧いただくために登録をお願いします


 

このブログが面白かったら、こちらもポチッとお願いします。


閲覧数:74回4件のコメント

最新記事

すべて表示

減量します‼️

バンコク、シンガポールへの出張およびその移動中での爆食いで体重が増えました。帰国して1週間経っているのにまだ落ちる兆しが見えません。加えて、昨日岐阜に出張した際に、名古屋で食べた味噌煮込みうどん、これの影響もあって、今朝は血圧がかなり高めでした。...

出張終了

先週の水曜日の夜から副業の関係で出張に出掛けていました。それもあって、ブログをなかなか更新できませんでした。生徒さんが多くなってきて、休まずに通ってくれているので、教室を閉めるのに後ろめたさを感じます。今、うちの教室は週に一度のレッスンの生徒さんが多いので、1週間レッスンを...

いよいよ今年も残すところ2ヶ月です

今年の4月から通ってくださっている生徒さんがこの間いってました。週に2回レッスンがあると、本当に時間が経つのが早いと。私自身も、太極拳教室を始めてから、時間の流れがとても早くなったように感じています。 これまでは週末と水曜日を中心に回してきました。週末が終わるとすぐに水曜日...

4 commentaires


MASA IMpossible
MASA IMpossible
16 févr. 2023

Having greed for ourselves is good.

J'aime

MASA IMpossible
MASA IMpossible
16 févr. 2023

GEKKO!

J'aime

ELL
16 févr. 2023

As I read this, I imagined a surprisingly interesting conversation that could take place between Zen masters and the classical economists. I wonder how a Zen master would respond to Adam Smith's famous "It is not from the benevolence of the butcher, the brewer, or the baker that we expect our dinner, but from their regard to their own self-interest."I think I'm more convinced by the economists on this point, but I am not a Zen practitioner, so I am not well-informed. I was intrigued by your quotation from Suzuki about the importance of a goal. The older I get, the more convinced I am that a laser focus on realistic goals is critical for a healthy life. When something…

J'aime
Michihiko Sato
16 févr. 2023
En réponse à

Thank you, Ell. Being healthy is very important and that is why I am encouraging people to do Taichi. However, some people tend to chase too much and start looking for a way to live forever, which could be considered as greed.


J'aime
bottom of page