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執筆者の写真Mitch Sato

教師は生徒によって鍛えられる

個人レッスンを通じて教え始めて2年、レッスン数が150回を超える生徒さんがいます。一通り108式套路をやり終えて、現在より正しい動きになるような修正を行なっています。


レッスンの後の復習もしっかりするし、この間、レッスンの際に習ったことをまとめたメモを見せてもらったのですが、他の生徒さんでこれだけ詳細なメモを書いている人を見たことがないくらいのレベルでした。こういった本人の努力の結果、動きもだんだんスムーズになってきました。こちらが細かい修正をしても、全く意図が通じないということはなく、最近は全てを言わなくてもわかってくれるような気がします。


上達が感じられるので、教える立場から見ると、教えていて楽しい生徒さんになります。


私自身、この生徒さんに鍛えられているなぁ、って昔から思っています。わからないこと、できないことがあるととにかく質問します。単に、わからない、というだけの質問ではなく、こんなふうにやってみたのだけれど、ここでうまくいかない、ここが問題のような気がするのだけれど、ここはこれ以上動かせない、といった感じで、自分でトライをして、いろいろな分析をしてきます。単に「わからない」と聞かれただけなら、普段通りの説明をして終わるのですが、ここまでピンポイントに聞かれると、しっかり考えて、ピンポイントの答えを用意しなければなりません。


元々バレエをやられていた方なので、身体は基本的にはどう動かすべきか、ということをご存知です。そのため、分析もきちんとしていて、こちらがなるほどなぁ、そんな見方もあるのか、と感心してしまうこともしばしばです。


こんな感じなので、この生徒さんとの個人レッスンは非常に頭を使います。答えを用意するために、なぜうまくいかないか、どうしたらできるようになるかの仮説を立てて、その仮説に基づいて、動作を行ってみてもらいます。うまく行く時もあるし、うまくいかない時もあります。うまくいかないときは、仮説の立て直しです。


仮説が思ったとおりで、生徒さんから、「なるほど、そう動かしたら今までと違った感覚で動かせる」という反応を得られた時は、本当に嬉しいです。うまくいった仮説は、他の生徒さんに教えるための血となり肉となっていきます。


自分にもっと経験と知識があれば、どんな質問にも立ち所に答えられるのでしょう。でも、質問された時には、質問の背景や理由をきちんと考えて、質問した人に合わせたテイラーメイドの答えを提供し続ける姿勢はいつまでも失わないようにしたいと思います。


デモだけを何度かやって、そこから生徒さん自身が自分で学び取りなさい、っていう教え方もあるようです。手取り足取りでは教えないという方法です。そういう態度でしか教えきれないこともあるのだと思いますが、少なくとも私が教えることのできる内容は、まだまだ言葉できちんと教えられるレベルです。いつかこのレベルを超えて、私の取り組む姿勢とか心構えから学ぶことができる、と思ってもらえるようにまだまだ修行です。



これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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