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息子からの問いかけ

執筆者の写真: Mitch SatoMitch Sato

昨日、息子から話をする時間があるかとSkypeで聞かれました。夜は出かける予定があったものの、それまでは時間があったので、時間を決めてビデオで話をすることにしました。


普段何もない時の相談事は母親に行くことが多い気がしているので、改めてなんだろうなとちょっと気になりました。何か深刻なことでもなければいいけど、と。


ビデオに写っている顔を見た感じ、深刻なことは特になさそうだし、奥さんもいつも通りニコニコしていたので、ホッとしました。何となく雑談をして、相談事は特になかったのかな、って思っていると、「実は聞きたいことがあって・・・」と話を始めました。


彼は、今年の夏ぐらいからヨガの先生になるためのクラスに通っていて、それが来年の夏まで続くそうです。来年の夏までに学びきれないものはどうしたら良いのだろうか、というのが根本的な悩みのようで、シンガポールでの修行の期間を来年の夏までと期限を区切っている私の心境を聞いてみたかったそうです。学びきれないものがあった場合にどうしたら良いのか、学びきれない可能性があることをどんな風に捉えているのか、という感じの質問だと理解しました。


今思うと、答える前に、もう少し質問の背景をしっかり聞いてあげればよかったと反省しています。ひょっとしたら、質問の意図を全く誤解したまま解凍していた可能性があるなぁ、とこのブログを書きながら反省しています。相変わらずせっかちの性格は治りません。


2年ぐらい前まで私も同じような悩みを持っていました。ビザと資金の都合で、残り3年でシンガポールでの修行を終了させなければいけないことが現実味を帯びてきた時期です。3年というかなりの期間は残されているけど、もし学びきれなかったらどうしようかと、考えたことは何度もありました。その度に、修行の期間を伸ばせないかと画策しました。


結局、この画策はあまり意味がないように感じました。仮に期間を延ばせたとしても、師匠がいつまで元気に教え続けられるかは誰にも分からないことです。師匠がよくいっています。先代の師匠が亡くなって、きちんと学ばなかったことを悔やんでいた人がたくさんいたと。仮に3年の期間を10年に延ばせたとしても、習い続けられる保証はどこにもありません。


しばらく悩んだ結果、出てきた答えは、目の前にあることをやるしかない、ってことでした。悩みのせいで今できることをやらないで先送りにしていたら、できる可能性があることすらできなくなってしまうことになります。まさに、禅の考え方で出てくる「今、ここ、このこと」です。自分は、今、ここにいる。できることが目の前にある。だからやる。そう思えるようになってきて悩みがかなり楽になりました。


そんな気持ちで練習を続け、教室で教え続けていたら、その時点で自分が持っている知識でも、他人に役に立つことはあるのではないか、って思えるようになってきました。少なくとも太極拳を通じて、足腰を鍛えてあげる、姿勢を正しくしてあげる、その結果として高齢になってもきちんと自分の足で歩くことができるような身体を持てるようにしてあげる、これぐらいのことはその時点でも何とか出来そうだと思えました。


それから先のことは、できるようになれば「なお可」だと考えられるようになりました。例えば、太極拳の武術的な側面については、ずいぶん上達はしましたが、まだまだです。この伝統的な技術をしっかりと後世に残せるレベルになっているかというと、それもまだまだ疑問が残っています。


もう一つ大きな心境の変化があって、自分が東京で開こうとしている太極拳教室では、自分ができることしか教えない、中途半端にしか出来ないことは教えない、背伸びは絶対にしない、と心に決めました。他の方のブログやFacebookを見ているとすごいなぁ、って感じる人がたくさんいます。でも自分は自分、と割り切れて、背伸びをすることをやめたら、今、欲張っていろいろなことを吸収しようとするよりも、師匠が提示してくれていることを一つ一つしっかりと消化していく方が大切だと思えるようになりました。


息子が質問をしてくれたおかげで、改めて、こんな心境の変化があったことを思い出させてもらえました。残された期間、兜の緒をもう一度締め直すいい機会になりました。


そんな機会をくれた息子に感謝です。





これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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