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太極拳に関する時間と目標

何か新しいものを学ぶとき、真面目で頑張る人ほど、時間を決めて目標を立てる傾向があると思います。学校での教育にせよ、会社での評価にせよ、ある期間で達成できる目標を決めて、その達成具合で評価され続けてきたことに由来しているのではないでしょうか。頑張れば手が届く程度の目標を立てて、それを達成する、そして達成したことを喜びに感じる、そんなことを繰り返してきた人はたくさんいると思います。


こういうやり方が苦手な人もいると思います。例えば、地道に毎日同じ作業を繰り返すような場合、目標設定ってあまりそぐわない気がします。


さて、太極拳も習い事です。基礎を作り、套路の動きを覚えて、体だけでなく、心もリラックスさせることで、自分が思った通りに身体を動かせるようになることを学ぶためのプロセスです。


ここに、時間が付随する目標を立てて実行していくのは如何なものか、と疑問に感じることが最近ありました。


私は、来年2月に控えた本帰国を予定しています。学校でもそれをアナウンスしてもらいましたし、個人レッスンを引き受けるときには、その旨事前に説明します。そんな中、2月までに、太極拳をできるだけ日本語で学びたい、と言って個人レッスンを申し込まれた方が二人いました。


私の経験から、最短で108式套路を一通り学び終えるのには、少なくとも個人レッスンを50レッスン受けることが必要です。もちろん、これで套路が学び終えられるわけではなく、とりあえずの動きが理解できて、誰かが一緒にやってくれれば、真似ることができる、といった程度です。この後、さらに、動きを覚えるために、練習を繰り返し、その後、より正確にするために修正を加えていく必要があります。


申し込まれた方の一人が、50レッスンという数字を聞いて、週2回やり続ければなんとか達成できるということで、やり切りたいと希望しました。今思うと、このとき、無理をしないで、もっとゆっくりしたペースで進めたほうが良い、とアドバイスするべきでした。


この方、根が真面目で、自宅でも練習はきちんとしていました。でも、時間がプレッシャーになってしまったのか、そもそもそういう性格なのかは分かりませんが、次第に自分が思うようにできないことに苛立ちを覚えられたようです。レッスンを重ねても思うように動けない、覚えられない。時間だけどんどん経過していく。結局、途中で挫折してしまいました。幸い、気持ちを入れ替えて、今はグループレッスンでゆっくりと学ぶようになってくれました。


太極拳の習得って、基礎作りが非常に重要だと思っています。足腰がしっかりとしている、ある程度の柔軟性がある、といった基盤作り、これはかなり時間がかかります。これができていれば、套路を学ぶのもそれなりに早くできます。50レッスンで108式套路を一通り学んだ方は、もともと足腰がかなり強い方でした。


動きに慣れるのにも時間がかかります。覚える前に、まずは太極拳独特のゆっくりした動きに慣れて、他の人と一緒にやりながらついていけるようになる必要があります。


これらの作業は、繰り返しが必要なのですが、どれだけ繰り返さなければいけないかは、かなり個人差があると感じています。


太極拳は、多くの方々にとって所詮趣味です。趣味に会社でやっているような目標を立てて、それを達成していく、という方法を持ち込むと、本来の太極拳の良さが半減してしまうような気がします。


太極拳は、心も身体もリラックスさせて、身体全体にエネルギーが十分に行き渡るようにするためのものです。目標に向かって心を固くしてしまうと、本来の目的から外れていってしまいます。仕事でも無理をしているのに、趣味でも無理をしたら、元も子もないように感じます。


目標を立てて頑張る、っていうのは、普通であれば評価されるべきことだと思います。私自身も努力ができる人は好きです。でも、努力も行き過ぎると、「欲」につながって、心も身体も固くなります。カチカチの、ロボットみたいな動きの太極拳をやっている人は、意外と努力家の人が多かったりします。


上手くなりたい、という思いを持ちながら、「欲」深くならない、この辺りが太極拳の大きな挑戦だったりします。


時間にとらわれるのではなく、毎日の練習の延長が、いつか向上につながる、ぐらいに思って練習を続けられる、ウサギではなく、亀のような行動を取れる人の方が、太極拳は上手くなるのかもしれません。


こんな経験から改めて、太極拳を学ぶのに、時間の期限を設けるべきではないと感じました。


 

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呉式太極拳教室「太極の小径」では、2023年10月からの生徒さんを募集しています。詳しくはこちらからご覧ください。



 

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