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反田恭平著「終止符のない人生」

ちょっと前にこんなブログを書きました。ネットで紹介されていた反田恭平氏の「終止符のない人生」の宣伝を読んだ後の感想です。



シンガポールでも日本の本を紀伊國屋書店で買うこともできます。でも、高いです。ネットで取り寄せることもできます。でも、送料が結構かかります。


今回はちょうど日本に出張される方がいたので、その方に持ってきてもらいました。手に入れたのが4日前。本日読み終わりました。最近読んできた本はちょっと小難しい、真剣に取り組まないと意味すら把握できないものが多かったので、この本はさらさら読めて楽でした。


最近読んできた本は、読み終わるまでに少なくとも2週間ぐらいはかかっていたので、何がそんなに違うのかな、と考えてしまいました。


この本、ピアニストとして一流であることをショパンコンクールを通じて証明した作者が、幼少の頃から今に至るまでどんなふうに生きてきて、将来何をしたいのか、という時間軸に沿って書かれています。人の人生なので自分のものとはもちろん違いますが、時間軸があるおかげで場面設定がしやすいのだと思います。中身が想像しやすいといってもいいかもしれません。なので多少読み飛ばしてしまっても、中身がわからなくなることがないので、前のページに確認のために戻って読み直す作業がいらないのでしょう。


さて、中身ですが、上記のブログで書いた通り、かなり期待をして読み始めました。


反田氏がどんなふうにピアノと向き合っているのか、そのためにどんな努力をしているのか、芸術家とは何か、ということを知れるのではないかと思ってこの本を手に取りました。これらの目的はあまり果たせなかった気がします。


彼の過去、ショパンコンクールへの挑戦の道筋、これからやりたい事、を通して、それらのことが感じられないわけではないですが、もっと直接的な言葉で聞きたかったです。


太極拳を芸術として捉えたい、そのために他の芸術家は自分の芸をどのように捉えているのだろうか、ということを学びたくて、世阿弥の花伝書や宮本武蔵の五輪書を読みました。そこでは、「かくあるべき」がたくさん並んでいました。分野は違えど学ばなければいけないことはたくさんありました。


この手の本を「芸道論」というそうです。「平安時代かから江戸時代あたりまでの和歌、猿楽、生花、茶の湯、香、武術などの道を究めるために、その道の達人が後継者や師弟、門人の修行のよすがとして書き残したもの。」とウィキべディアでは定義していました。


この本が、これらに比べて軽めに感じられた理由の一つは、想定している読者なのかなと感じます。世阿弥や宮本武蔵の本は、同じ道を目指している人たちに対する語りかけです。私のように他の分野から覗き込む人はいますが、それは例外なのだと思います。


反田氏のこの本は、ピアノを弾いている人、もっと極めたい人に向けて書いたのではなく、読者は一般の人です。なのでピアノに関する難しい理論も、こう弾くべきという話もなく、反田恭平という人の人生の紹介になっているのだと思います。


でも、共鳴できるところがなかったわけではありません。


「これが正解だ」と断言することなく、「永遠の求道者」として、正解の見つからない問いと向かい続けたい、という内容が何度か出てきます。音楽に王道も正解もないそうです。


ロシアの劇作家であるチェーホフの言葉が引用されています。「芸術家の役割は問うことであり、答えることではない」。どこまでも謙虚は姿勢で音楽と対話を続け、音楽を探求する悠久の旅を死ぬまで続けたい、というくだりは自分も身につけたいと感じました。


私も、太極拳ってなんだろう、なんのためにやるのだろう、何をやったら先に進めるのだろう、こういった問いの答えを探しながら、毎日の鍛錬を続けていきたいと感じました。満足をしたらそこで終わってしまうわけです。


ショパンコンクール2位の成績が証明する通り、反田氏はすでに一流の芸術家の域に達しているはずです。いつかそんな人が、何部売れるのかを気にすることなく、本気で芸術家を目指す人に向けて書いた「芸道論」を書いてくれることを期待します。






これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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