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執筆者の写真Mitch Sato

修行中学んだこと14 - 伝統を伝えることの難しさ

私が学んできた太極拳、「伝統呉式太極拳」と言われています。何代にもわたって受け継がれてきたもの、ということで「伝統」という冠がついています。


伝えられてきたものをきちんと習得することはもちろん大変な努力が必要です。次世代に伝えるためには、教える内容をきちんと把握していなければ、できるはずがありません。その上で、先日のブログで書いた通り、教える技術を習得しなければ、伝わるものも伝わりません。


「伝統」を次世代に伝えるために弟子入りしたいです、という言葉を、何度も聞いてきました。そのためにどれだけの努力をしなければいけないかをきちんと理解してこの言葉を口にした人は、残念ながら私の周りにはいませんでした。


師匠が、一人前になるには、套路を5000回やらなければダメだ、って言っているのに、それを目指さないで、どうして「伝統」を伝えられるのだろう、って常に思ってきました。回数をこなすのは、量を追い求めれば良いだけなので、ハードルとしては低いはずです。それすらできずに、なぜ質が求められるのでしょう。


シンガポールって国は、歴史が浅い国です。伝統産業と言われるものはほとんどない、と言っていいと思います。どちらかというと目の前の利益に左右されて行動してしまう感じがあります。食べ物屋を開くのに、3ヶ月も学べば十分だろう、って感じでやっている人が多いのに驚きました。


日本には、いろいろな伝統工芸があります。一人前の寿司職人になるのに、3ヶ月で足りると思う人は皆無でしょう。いろいろな武術の達人を見ても、それらの人がどれだけの努力をしてきたかは、聞かなくてもわかります。


私自身がそういう文化的な背景を持つため、自分に厳しく練習を続けてこられたのかもしれません。


「伝統」を受け継ぎ、次の世代に伝える難しさは、文化的な要素だけではありません。経済的にも難しい要素がいくつかあります。「伝統」を学ぶのには、それなりの時間とお金の投資が必要になります。教える側も生活がかかっているので、タダで教えるというわけにはいきません。「伝統」の価値を高めるために、授業料を高めに設定することもあります。


教えられるようになったとしても、それで生活を賄えるほどの収入が得られるかどうかはわかりません。太極拳教室の場合は、よほどしっかり計画を立てないと難しいと思います。私が学んできたシンガポールの学校は、表面上の運営はうまくいっているように見えますが、継続企業として機能しているかというと疑問が残ります。


学校ができてまだ1代目なので、この学校を継いで、生徒さんを集め続ければ、生活費が稼げるという保証がありません。暖簾分けをしてもらったとしても、暖簾にそれだけの価値があるかどうかもわかりません。


経済的な不安を解消してあげなければ、特に若い世代の人たちが本気で打ち込むことは、難しいでしょう。


これから作る自分の学校。弟子がとれるほどになるのかどうかはわかりません。もし、自分の技を引き継ぎ、次世代に繋げたい、という人が現れたときに備えて、しっかりと不安を解消してあげられるような下地を用意しておきたいと思っています。


 

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