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執筆者の写真Mitch Sato

修行中に学んだこと⑥ - 無極功

学ぶことは、人から教えられたことだけではありません。自分であれこれと試行錯誤を繰り返して、たどり着いたものも「学んだこと」と言えると思います。最近は、インターネットでかなりのことが調べられてしまうので、表面的なことを「知る」のはそれほど難しくはないと思います。しっかりと体得するためには、練習を続けて、自分のものにしていくプロセスなしには無理でしょう。


無極功は、以前東京で太極拳を習っていた時に、始めて知った練習方法です。爪先を八の字に開いて、ただ直立不動の状態を作るだけです。きちんと立つことは難しい、とその当時も聞いたことはあったのですが、正直、何が難しいのかわかりませんでした。少なくとも、自分は立っていることはできたし、別に不安定でもない、何も問題意識を感じませんでした。


シンガポールのうちの学校では、この練習はやったことがありません。名前すら聞いたことがないです。


シンガポールに移住してから、この練習をやるようになったのは、太極拳をやるにあたって、少しでも落ち着いた心を持ちたいと考えたのがきっかけでした。その頃は何も考えず、ただ単に壁に向かって、壁をじっと見つめて立っていただけでした。


その後、禅の本を読みながら、心を落ち着けるためには、体と呼吸も整えていかなければいけない、と言うことを学び、それを取り入れるようにしました。


呼吸は、吐くことをより意識しながら、吸うときも吐くときも、胸を膨らますことなく、肩が動くことがないようにしました。吐くときには、丹田を意識するようにもなりました。


禅を学ぶ前から気づいてはいたのですが、立っていると、左の首から肩にかけてがだんだん張ってきて、動かすとゴリゴリ音がしました。何か力が入っているような感じなのですが、どこに力が入っているのかわかりませんでした。


立っていても、片側の首が張ってくるようでは、いくら心を落ち着けたくても、そこに神経が入ってしまい、落ち着いてくれません。体のいろいろな部分の力を抜いて、自然な姿勢にする必要がありそうです。


ここから先は、現在もまだ試行錯誤を続けています。現在行なっているのは、昨日、站桩のときに書いた通り、足の爪先を内側に向けて立つことをやっています。足や腰の捩れが取れて、首の張りも少なくなったように感じます。これからあれこれと試みを続けながら、自然な正しい姿勢を求めて、無極功を続けていこうと思います。


誰かから学んだことではありませんが、太極拳を習っていることから生まれた問題意識から、自分で色々と研究したことです。自分の生徒さんたちに本格的に教えたことはないので、立っている姿勢をどんなふうに修正して良いかもわかりません。


中国の思想では、「有」は「無」から生まれるという考え方があります。太極拳の様々な動きは、「無」の状態から生まれるべき、と考えて、私は無極功をこれからも自分の鍛錬の主な柱としていくと同時に、自分の生徒さんにもきちんと伝えられるような準備もしていきます。




 

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