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執筆者の写真Mitch Sato

修行中に学んだこと⑦ - 推手

太極拳は、単に套路を踏んで体を鍛えるだけではなく、実際に武術としても使えるものです。そのための練習が推手です。


残念ながら、私が学んでいたシンガポールの学校では、実際の技の応用にそれほど力を入れていなかった感じがあります。生徒さんが怪我をすることを恐れていたのが主な理由だと思います。最もなことです。技の応用の基本動作や理屈は何度も学びましたが、実際の場面にすぐに応用できるレベルまでの練習はやりきれませんでした。


実際の場面での応用は、習った生徒さんが他の方に怪我を負わせることを恐れることもあります。教室で教わったことを使ってよその人を傷つけたら、教えた人はそれなりの責任を取らなければなりません。武術を教えるにあたって、教える人を選ばなければいけない、というのはそう入った事態を防ぐためです。そのために弟子になった人にしか教えない、と入ったことも起こるわけです。


とはいうものの、推手に関してもそれなりのことは学びました。単推、双推、四正推手等々、相手と向かい合って、お互いの手首を合わせて、相手の動きに合わせてどう動いていくかを学ぶ練習は随分やりました。3年ぐらい前から、師匠に個人レッスンをつけてもらうときには、最初の15分間は、これらの動きをひたすらやりました。



イメージは、こんな感じです。初めのうちは、足を前後させず、直立の状態でひたすら腕のみを動かします。足の動きも合わせると、腕をリラックスすることがなかなかできないためです。


他人に押されると、どうしても押し返してしまいます。押し返そうとするとどうしても力が入ってしまう、力が入れば動きは硬くなります。それをどうやって柔らかい、リラックスできる状態を学ぶ最初の壁が単推でした。


相手の人と向かい合ってたち、片手の手首を合わせてそれを前後に楕円をかきながら動かすだけの練習です。初めの頃は、何のためにこれをやっているのか、全くわからず、ただ単に手を動かし続けていました。


師匠と毎日のように練習をするようになって、どうやって力を抜くかが少しずつわかってきました。体の力を抜くことももちろんなのですが、心を落ち着かせることも必要な要素です。なんとかして相手を押したい、勝ちたい、と思ってやっているうちは、余分な力がどうしても入ってしまいます。とにかく相手の動きついていく、かたときも触れている手首が離れることがないようにする、相手がどう動いてもついていけるようにする、こんなことを考えられるようになってきたら、師匠の急な動きにも対応できるようになってきました。


こんな感じで相手の動きを感じることを「聴勁(tīng jìng / ティン・ジン)」と言います。余分な力が入っているとできないことです。現在、自分の弟弟子と単推を練習しますが、彼の動きはまだまだ力任せなので、私ぐらいでもかなり支配できる感じです。


もう一つ、頻繁にやった練習は、片方の足を前に出して、構えた人を両手で押す練習です。勢いをつけて押すのではなく、押す側の人の両掌は、相手の方にピッタリとつけて、そのまま前に向かって押します。押された場所に痛みは何もありません。足の裏から、膝、腰、背中、肩、腕、手が全てうまくつながって、相手を押すと、本当に相手が後ろに飛びます。


推手は、套路の応用ではありますが、同時に、推手をなぜやるのかがわかり、実際にやれるようになってくると、套路の動きにも反映されてきます。套路の動きがさらに柔らかくなり、どう使うのかをわかっているため、動きに意念が反映されやすくなります。


シンガポールの学校での傾向では、女性よりは男性の方が推手に興味を持つ傾向があるようです。女性はやはり攻撃の匂いがするものは好みでないのかもしれません。


攻撃のためではなく、自己防衛のために太極拳をやる、っていう話はよく聞きますが、私は、他人と対峙するのは、自己防衛であっても最終手段で、そんな場面に出会したら、可能な限り逃げ出すのが最良の手段だと思っているぐらいがちょうどいいと思います。武術をやっている人からすると腰抜け、って言われそうですが、逃げてもどうしても逃げきれなかった時のために、必殺の一撃は取っておきます。



 

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